・・・ そういう種類の文章のもう一つの特徴は、文章が粗大の傾きをもっていることである。大いに堂々と云われている結論なり断定なりが、十分精密強固な客観的事実の綜合の結果として、そう云われざるを得ないものであったことを文章のなかで自然と納得させて・・・ 宮本百合子 「今日の文章」
・・・最もいつわりのなかるべき芸術の仕事をしている女のひとの感情でさえ、たとえば近頃の岡本かの子氏の時局和歌などをよむと、新聞でつかうとおりの粗大な形容詞の内容のまま、それを三十一文字にかいていられる。北原白秋氏は、観念上の「空爆」を万葉調の長歌・・・ 宮本百合子 「祭日ならざる日々」
・・・去年の秋の作品であるが、この粗大な、民族的類型化を卓抜な科学者であるという沼田博士に云わしめているのである。アメリカに移民として働いている日本人の不正入国をしたものが何より恐れているのは、アメリカ人であるか、ニグロであるか、或は同じ日本人で・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・ ところが、今日の実際に於て、そういう種類の作家たちから一般の読者が与えられている作品は、どういう性質のものであろうか。粗大な概括をすることを深く警戒するものであるが、今日までのところ、現れている作品は多く手法の上で何かの問題を持ってい・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
出典:青空文庫