・・・興じたる黄金の時よ 玉の日よ汝帰らず その影を求めて我は 歎くのみ ああ移り行く世の姿 ああ移り行く世の姿塵をかぶりて 若人の帽子は古び 粗衣は裂け長剣は錆を こうむり・・・ 太宰治 「乞食学生」
・・・小児遊戯の年齢には粗衣粗服、破れても汚れても苦しからぬものを着せて、唯活溌の運動を祈る可し。又食物も気を付けて無害なる滋養品を与うるは言うまでもなきことながら、食物一方に依頼して子供を育てんとするは是亦心得違なり。如何に食物を良くするも、其・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・寺の僧侶が毎朝早起、経を誦し粗衣粗食して寒暑の苦しみをも憚らざれば、その事は直ちに世の利害に関係せざるも、本人の精神は、ただその艱苦に当たるのみを以て凡俗を目下に見下すの気位を生ずべし。天下の人皆財を貪るその中に居て独り寡慾なるが如き、詐偽・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
出典:青空文庫