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・・・…… 雨乞のためとて、精進潔斎させられたのであるから。「漕げ。」 紫幕の船は、矢を射るように島へ走る。 一度、駆下りようとした紫玉の緋裳は、この船の激しく襲ったために、一度引留められたものである。「…………」 と喚く・・・
泉鏡花
「伯爵の釵」
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・・・同じデカダンでも何処かサッパリした思い切りのいゝ精進潔斎的、忠君愛国的デカダンである。国民的の長所は爰であろうが短所も亦爰である。最っと油濃く執拗く腸の底までアルコールに爛らして腹の中から火が燃え立つまでになり得ない。モウパスサンは狂人にな・・・
内田魯庵
「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」