・・・ 反対にその優越条件に目をつけて、青年学生を誘惑しようとするたちのよくない女性があるに相異ない。純良な、世間知らずの学生がこの種の女に引っかかって、あたら青春の記憶を汚す例は少なくない。そのくらいではすまず、かなり大きな傷と負担を背負わ・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・至極お心よしの純良な性質であった。ただあまりに世間見ずのわがままなおぼっちゃんの象であった。それでこの見知らぬ国へ連れられて来て、わずかの間に、相手になる日本人の気心をのみ込んで卑屈な妥協を見いだすにはあまりに純良高尚すぎた性質をもっていた・・・ 寺田寅彦 「解かれた象」
・・・本書すでに教科書の名あるからには、これによりて少年学生輩の徳心を誘導して、純良の君子たらしめんとの目的なるべし。 然らばすなわち、徳行の条目を示し、人たるものはかくあるべし、かくあるべからずと、ていねい反覆その利害を説明して、少年の心を・・・ 福沢諭吉 「読倫理教科書」
・・・愚劣なもの、醜悪卑劣なもの、同時に賢明、純良、壮大であり横溢的で、すべての現象が、現世界の全保有量の過半をしめるアメリカ的社会の上に満開している。その失業やストライキや住宅難もともに。ソヴェト作家シーモノフは、このアメリカの巨大な有機体のな・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・「純良香水。一瓶三十五銭」 台の後に男が立っているのだが、赧っぽい髪と、顎骨の張った厳しい蒼白な顔つきとで、到底、買いてを待つ商人とは思えなかった。兵隊であったかと感じる程、身じろぎもせず、げんなりした風もなく突立っている。見て、寒・・・ 宮本百合子 「粗末な花束」
出典:青空文庫