「おじさん、こんど、あめ屋さんになったの。」 正ちゃんは、顔なじみの紙芝居のおじさんが、きょうは、あめのはいった箱をかついできたので、目をまるくしました。「ほんとうだわ、おじさん、あめ屋さんになったの。」と、花子さんもききました・・・ 小川未明 「夏の晩方あった話」
・・・ そのつぎには、カチ、カチと拍子木を鳴らして紙芝居が、原っぱへ屋台をおろしたのです。 たくさん子供たちが、わいわいと集まってきました。ヨシ子さんも、三郎さんも、我慢がしきれなくなって、とうとう、そっちへかけ出していってしまいました。・・・ 小川未明 「左ぎっちょの正ちゃん」
・・・とぼとぼ河堀口へ帰って行く道、紙芝居屋が、自転車の前に子供を集めているのを見ると、ふと立ち停って、ぼんやり聴いていたくらい、その日の私は途方に暮れていました。ところが、聴いているうちに、ふと俺ならもっと巧く喋れるがと思ったとたん、私はきゅう・・・ 織田作之助 「アド・バルーン」
・・・下手な紙芝居みたいになるかも知れませんが、笑わずに、まあ聞き給え。 あまり古い写真は無い。前にも言ったように、移転やら大掃除やらで、いつのまにか無くなってしまいました。アルバムの最初のペエジには、たいてい、その人の父母の写真が貼られてい・・・ 太宰治 「小さいアルバム」
・・・ 紙芝居にしても悪くはなさそうである。それはとにかく、これだけの、小さな小さな「火事教育」でも、これだけの程度にでもちゃんとしたものがわが国の本屋の店頭にあるかどうか、もし見つかったかたがあったらどうかごめんどうでもちょっとお知らせを願・・・ 寺田寅彦 「火事教育」
出典:青空文庫