・・・イイカネ、螺線の類は非常に多いがネ、第一は直線的有則螺線サ、これは玩弄の鉄砲の中にある蛇腹のような奴サ、第二は曲線的有則螺線サ、これはつまり第一の奴をまげたのと同じことサ、第三は級数的螺線サ、これは螺線のマワリが段々と大きくなる奴サ、第四は・・・ 幸田露伴 「ねじくり博士」
・・・「空論をお話して一向とりとめがないけれど、それは恐縮でありますが、丁度このごろ解析概論をやっているので、ちょっと覚えているのですが、一つの例として級数についてお話したい。二重もしくは、二重以上の無限級数の定義には、二種類あるのではないか、と・・・ 太宰治 「愛と美について」
・・・五次方程式が代数的に解けるものだか、どうだか、発散級数の和が、有ろうと無かろうと、今は、そんな迂遠な事をこね廻している時じゃないって、誰かに言われているような気がするのだ。個人の事情を捨てろって、こないだも、上級の生徒に言われたよ。でも、そ・・・ 太宰治 「乞食学生」
・・・ 数学の方で収斂級数というものがある。第一項に第二項を加え更に第三第四と無限の項を附け加えると、その総和は有限なものになる。例えば1+1/22+1/32+1/42+………………… ad inf.のごときものがある・・・ 寺田寅彦 「方則について」
・・・その要領は人類の居住すべき世界の土地は一定である、又その食料品は等差級数的に増加するだけである、然るに人口は等比級数的に多くなる。則ち人類の食料はだんだん不足になる。人類の食料と云えば蓋し動物植物鉱物の三種を出でない。そのうち鉱物では水と食・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
出典:青空文庫