・・・家庭内のどんなささやかな紛争にでも、必ず末弟は、ぬっと顔を出し、たのまれもせぬのに思案深げに審判を下して、これには、母をはじめ一家中、閉口している。いきおい末弟は、一家中から敬遠の形である。末弟には、それが不満でならない。長女は、かれのぶっ・・・ 太宰治 「愛と美について」
・・・家庭内のどんなささやかな紛争にでも、必ず末弟は、ぬっと顔を出し、たのまれもせぬのに思案深げに審判を下して、これには、母をはじめ一家中、閉口している。いきおい末弟は一家中から敬遠の形である。末弟には、それが不満でならない。長女は、かれのぶっと・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・カールはこの頃、ボンに住んだり、トリエルのヴェストファーレン家に暮したりして、つぎつぎの家庭的紛争に心を労していたといわれている。が、その内容を知るものはない。 カールとイエニーとが、長い七年間の婚約時代をへてついに結婚したのは一八四三・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・しかしながら、新聞は、繭の高価を見越し、米の上作を見越して債権者はこの秋こそ一気に数年来の貸金をとり立てようとしているから、それを注意せよ、当局もそこから生じる紛争を警戒している、というのである。農民は今日の社会的事情にあっては、実った稲を・・・ 宮本百合子 「自然描写における社会性について」
・・・ラルフ・バンチ博士はパレスチナ紛争調停の功によって、黒人として初のノーベル賞受賞者である。 バンチ博士の話の中で次の数行に関心をひかれた人は少くないだろうと思う。「人間は社会関係の方面では、自然科学の方と同じような天才を示さない」「自然・・・ 宮本百合子 「「人間関係方面の成果」」
・・・つねに、軍事紛争をひきおこしていて、それが新しい戦争のためにおそるべき道をひらく危険をもっている植民地体制に反対することを宣言しています。 去年の八月十五日、わたしたちが声をあわせて戦争挑発をやめよ、と叫んだとき、それは、きょうの日本の・・・ 宮本百合子 「わたしたちには選ぶ権利がある」
出典:青空文庫