・・・そして、その限界をのりこえてより社会的に発展するか、またはより主観的なものに細分され奇形で無力なものになってゆくかの岐路に立った。この極めて興味のある文学上の課題はすべての人々がみているとおり今日またちがった歴史の段階に立って、解決され切ら・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第三巻)」
・・・ 私たちは、自分の性格というものまで、今日の社会機構の不自然な分業と、その全計画に参加し得ない組織によって労力だけをしぼられているうちに、いつとなく細分され、一面化されている。現在の家庭というものも女にとってこの例外ではない。私たちはそ・・・ 宮本百合子 「個性というもの」
・・・同人雑誌であってもその中で積極的な能力を示す、人々のヘゲモニーのもとに一つのせまい文壇的流派にあつめようとするよりも、むしろ、これまで、より細分された文学愛好者グループとして、旧い文学と文壇潮流からうけて来ている個性の偏倚や文学観のかたより・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・専門で分れ、文化面、生産面という活動場面で細分されている人民層である間は、抑圧とすべての形での非人間的圧迫に堪える力が弱い。このことは、人民よりも支配者たちがよく知っている。現に労働法の改悪は、日本の労働組合の分裂作業が効果を現わしてからで・・・ 宮本百合子 「前進的な勢力の結集」
・・・大戦後は散文は神経腺のようなものになり、さもなければ破産的なものに細分された。 アランの散文に対する誤った理解はよくそれを語っている。 日本の近代文学において、散文はどんな伝統に立っているだろうか。 そういう見地から見ると、漱石・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
・・・今、やっと思ったんですが、ブルジョア文学の中でも一般的に性格というものが、男女にかかわらず細かく、弱く、細分されたものになっているということは意味深いことですネ。文学においても現実の社会状態の中で個性が粉砕されること、体系を失うことがよく反・・・ 宮本百合子 「不満と希望」
・・・ 然しながら、漱石が、人間性のより高さへの批判をもって観察した現実の自我は、社会の諸制約によって歪み、穢され、細分され、自我と利己との分別をさえ弁えぬ我と我との確執、紛糾であった。彼が晩年「明暗」を執筆していた頃の日記には、この偉大な芸・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
出典:青空文庫