・・・人間の言葉の音波列を分析して、その組成分の中からその基音ならびに低いほうの倍音を除去して、その代わりに、もとよりはずっと振動数の大きい任意の音をいろいろと置き換えてみる。そういう人工的な音を響かせてそうしてそれを聞いてみて、それがもし本来の・・・ 寺田寅彦 「疑問と空想」
・・・ 五 幕末ものの映画をその組成要素に分解してみると、割合に少数なエレメントで大抵の用を便じていることが分かる。「密謀の集会」「大広間の評定」「道中の行列」これには大抵同じ土手や昭和国道がつかわれる。「花柳街の・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ 数学的の言葉を借りて云えば、各個人、市民、あるいは国民がある現象に対して利害を感ずる範囲は時間と空間とより組成されたる四元空間中において、ある面にて囲まれたる部分にて示す事を得べし。この部分は単独なる場合も、数箇なる場合もあるべし。・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・すなわち、人間の肉も骨も血もいっさいの組成物質の屈折率をほぼ空気の屈折率と同一にすれば不可視になるというのである。びん入りの動物標本などで見受けるように、小動物の肉体に特殊な液体を滲透させて、その液中に置けば、ある度までは透き通って見える。・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ 宇宙線が脳を通過する間に脳を組成するいろいろな複雑な炭素化合物の分子あるいは原子の若干のものに擾乱を与えてそれを電離しあるいは破壊するのは当然の事であるが、その電離または破壊が脳の精神機能の中枢としての作用になんらかの影響を及ぼすこと・・・ 寺田寅彦 「蒸発皿」
・・・従って白色光を組成する各種の波のうちでも青や紫の波が赤や黄の波よりも多く散らされる。それで塵の層を通過して来た白光には、青紫色が欠乏して赤味を帯び、その代りに投射光の進む方向と直角に近い方向には、青味がかった色の光が勝つ道理である。遠山の碧・・・ 寺田寅彦 「塵埃と光」
・・・種々な楽器の音や特に昔から問題となっている人声母音の組成要素を分析し研究するに適当な材料としてこの蝋管記録が種々に利用された。蝋管に刻まれた微細な凹凸を巧妙な仕掛けで郭大した曲線を調和分析にかけて組成因子の間の関係を調べたりして声音学上の知・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
・・・これらの事実は植物に関することであるが、しかしまた、日本国民を組成しているいろいろな人種的民族的要素の出所とその渡来の経路を考察せんとする人々にとってはこの植物界の事実が非常に意味の深い暗示の光を投げかけるものと言わなければならない。 ・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・合金などの性質も一般にその組成金属の性質から推して知られぬ妙な事がある。例えば普通金属中で最も磁石に感じやすいものは鉄とニッケルだが、不思議な事には鉄を七十七、ニッケルを二十三の割合に交ぜて作った合金は常温ではほとんど磁石に感じない。ハイカ・・・ 寺田寅彦 「話の種」
・・・すなわち、まず、言語、国語という一つの体系は若干の語根元素から組成されていると仮定する。次には、この元素が化合して種々の言語や文章が組成されているが、これらの間にはその化合分解の平衡に関するきわめて複雑な方則のようなものがあると想像する。な・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
出典:青空文庫