・・・それに私は、喧嘩を好まず、否、好まぬどころではない、往来で野獣の組打ちを放置し許容しているなどは、文明国の恥辱と信じているので、かの耳を聾せんばかりのけんけんごうごう、きゃんきゃんの犬の野蛮のわめき声には、殺してもなおあき足らない憤怒と憎悪・・・ 太宰治 「畜犬談」
・・・決闘の法式に従うぞ。組打ちはならんぞ。一、二、三、よし。」 すると何のことはない、デストゥパーゴはそのみじかいナイフを剣のように持って一生けんめいファゼーロの胸をつきながら後退りしましたしファゼーロは短刀をもつように柄をにぎってデストゥ・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・そこで、人間社会の構成が生産手段の進歩、複雑化するにつれて、同じ人間であっても、直接、体でもって自然と組打ち、泥にまびれ、水にぬれ、坑にもぐって働かねばならない者と、それらの労働の結果に生れた利益だけを物質的に、精神的に利用して、自身の手は・・・ 宮本百合子 「自然描写における社会性について」
・・・みのえは、後じさりにそろそろ上の坂の方へ出ながら、組打ちした場所と思わしい辺をちょいちょい見た。リボンで帯につけていたエァーシャープを彼女は振り廻したのであったがそれが環のところかられてどこへか行ってしまった。 小僧は、じろじろみのえの・・・ 宮本百合子 「未開な風景」
出典:青空文庫