・・・わたしたちを不幸にしている今日の現実の社会の矛盾と闘って人間らしい生活を組立ててゆこうとしている、その建設のうちにわたしたちの感じる幸福と幸福への途があります。 女性の古い抑圧がとりさられて自分の判断で結婚の相手をえらび、また恋愛をする・・・ 宮本百合子 「生きるための恋愛」
・・・稚いといっても小説は地味に大体このような組立てで書かれていってよいものだと思う。〔一九四八年六月〕 宮本百合子 「稚いが地味でよい」
・・・それを、作者は小説のなかでもくりかえし云われているとおりな自身の情緒のシステムにしたがって組立て、芸術の美感とは畢竟描かれた世界の中にあるという立てまえによって、一箇の幻想世界をつくりあげているのである。 この作品を、心理主義の描写とい・・・ 宮本百合子 「観念性と抒情性」
・・・プロレタリア芸術家たちは、マルクシズム・レーニズムの立場から制作を正統なリアリズムの骨格と肉づけとで組立てることに努力して来た。が、農業と工業との生産労働へ日夜接触して見ると、彼等は自身のリアリズムに多分の機械的マルクシズム、生産に対する知・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・そこをあけると、玄関が二畳でそこにはまだ一部分がこわれたので、組立てられずに白木の大本棚が置いてあり、右手の唐紙をあけると、そこは四畳半で、箪笥と衣桁とがおいてあり、アイロンが小さい地袋の上に光っている。そこの左手の襖をあけると、八畳の部屋・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・この間、大衆の健全な娯楽、階級的な文化の一般的啓蒙、あらゆる角度と種類からの労働者階級の文学、民主主義文学の創造と普及とは、必ずしもそれぞれの特殊性を有機的にいかすくみ合わせで組立てられてもいなかったし、動かされてもいなかった。 一九四・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・でも、露骨に内容に歴史的要素を沢山とり入れていますね、この頁に、すっかりヨーロッパ風のよそおいをした日本の子供がラジオ組立てで遊んでいる画があると、直ぐ次に、封建時代のサムライが出て来る。日本の子供はひんぱんにそうやって封建時代へ逆転させら・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・ そのような工場生活者の精神と肉体との組立てに対して、全く要素の異った詩吟というようなものが、どうして互によく調和し、休養と慰安と心の高まりと成り得るだろう。二つのものリズム・テンポの生理は、そもそもからちがっているのである。 今日・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・物質が元子から組み立てられていると云う。その元子も存在はしない。しかし物質があって、元子から組み立ててあるかのように考えなくては、元子量の勘定が出来ないから、化学は成り立たない。精神学の方面はどうだ。自由だの、霊魂不滅だの、義務だのは存在し・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・ F君は殆ど術語のみから組み立ててある原文の意味を、苦もなく説き明かした。 私は再び驚いた。F君は狂人どころでは無い。君の自信の大きいのは当然のことである。私は云った。「それだけ読めれば、君と僕との間に、何の軒輊すべき所も無いね・・・ 森鴎外 「二人の友」
出典:青空文庫