・・・機に触れて交換する双方の意志は、直に互いの胸中にある例の卵に至大な養分を給与する。今日の日暮はたしかにその機であった。ぞっと身振いをするほど、著しき徴候を現したのである。しかし何というても二人の関係は卵時代で極めて取りとめがない。人に見られ・・・ 伊藤左千夫 「野菊の墓」
・・・ 千八百円ベースが公称二千九百円になれば税率も高く、いろいろの給与が包括されてしまって、若い人は結局千八百円よりかえって少ししかとれなくなるのですから。 同じ婦人民主新聞に、G・H・Qの労働課長シュークリフ女史が、今年義務教育を終った十・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
第一私どもの目からみると議会内の大蔵委員会という重要な新給与予算の委員会席上で、あんなに酔うほど酒がでるということがそもそもひどいことだと思います。なにもうちでのめない連中ではなし、ごあいきょうの程度をこえています。公務員・・・ 宮本百合子 「泉山問題について」
・・・ 大蔵委員会で、数百万の人々の生命に関する新給与問題を扱いながら酒に酔いくらって婦人代議士に無礼をするような閣僚をもつ政府はいやです、と全日本の婦人が発言したとして、それのどこが不自然だろうか。議員も閣僚たちもみんなわたしたちの税で、歳・・・ 宮本百合子 「今年のことば」
・・・ 再び文学の大衆化が文壇に論ぜられるに当って、大衆の文化的発展の諸要因が無視されると共に、作家との関係では、作品の給与者、被給与者としての面が強調されていることは、実に時代を語っている。 かようにして文学は批判精神などに要なき民衆の・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 夫婦は一室を貰い、学生でも夫婦ものは、事情の許すかぎり特別な一室を給与されるのだ。 ソヴェト同盟が、勝れた階級の技術家を男から、女から必要とする必要は実につよい。従って、学生も専門技術学校、大学になるとあらゆる年齢を包括している。・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
・・・そこで、春さむい三月下旬のいま、新しく二千九百二十円の水準に向って、全勤労階級が種々な方法でその新給与の実現をもとめている。二千九百二十円で、二千四百カロリーはとれない。去年十二月下旬日本銀行の紙幣発行高は、凡そ二〇〇〇億円であった。この二・・・ 宮本百合子 「正義の花の環」
・・・政治の実権――主権を武家に確保するために、公家と武器と領地と領地の農民を背景とした僧侶の反抗の口実を防ぐために、天皇一族に対する給与ということが考えられていたのであった。 秀吉といえば、桃山時代という独特な時期を文化史の上につくり出した・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫