・・・数年前の統計によるとフィルムの生産高の数字においてはわが国ははるかにフランスやドイツを凌駕しているようであるが、これらの映画の品等においてはどうであるか。たくさんの邦産映画の中には相当なものもあるかもしれないが、自分の見た範囲では遺憾ながら・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・多数の研究者のうちで、何かしら一つの仕事に成功して学位を得る人の数が研究者全体の数に対する統計的比率を不変と仮定しても、研究者の総数がN倍になれば博士の数もN倍になる。のみならず、競争が劇しくなるために研究者の努力が劇しくなればこの比率も増・・・ 寺田寅彦 「学位について」
・・・それで、これは偶然の暗合であるか、あるいはこれらの間にいくぶんかの必然的関係があるかをできるなら統計学的の考えから決定したいと思ったのである。 この統計の基礎的の材料として第一に必要なものは火山名の表である。しかしこの表を完全に作るとい・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・ところが、抵抗力の強い人は罹病の確率が少ないから統計上自然に跡廻しになりやすい、そうしてそういう人は罹っても少々のことではなかなか最初から降参してしまわない。そうして不必要で危険な我慢をし無理をする、すれば大抵の病気は悪くなる。そうしていよ・・・ 寺田寅彦 「変った話」
・・・これを客観的に識別しようとすればめんどうな分析法によって多数の係数を算出し、さらにそれを統計にかけて表示しなければならない。さらにまた、盲人の触感は猫の毛の「光沢」を識別し、贋造紙幣を「発見」する。しかし、物の表面の「粗度」の物理的研究はま・・・ 寺田寅彦 「感覚と科学」
・・・これらの疑問ももし精密な実測による統計材料が豊富にあればいつかは是非いずれとも解決し得られる問題であろうと思われる。 二 九官鳥の口まね せんだって三越の展覧会でいろいろの人語をあやつる九官鳥の一例を観察する機会を得・・・ 寺田寅彦 「疑問と空想」
一「鉄塔」第一号所載木村房吉氏の「ほとけ」の中に、自分が先年「思想」に書いた言語の統計的研究方法(万華鏡に関する論文のことが引き合いに出ていたので、これを機縁にして思いついた事を少し書いてみる。「わらふ」と laugh につ・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・実際には行われ難き事なれども、もしも諸方に行わるる政談演説を聴きて、その論勢の寛猛粗密を統計表につくりて見るべきものならば、そのいよいよ粗暴にして言論の無稽なる割合にしたがいて、その演説者もいよいよ不学なりとの事実を発明することあるべし。他・・・ 福沢諭吉 「経世の学、また講究すべし」
・・・日本にて統計表の不十分なるも、その罪、多くは帳合法のふたしかなるによるものなり。 帳合法の大切なることかくの如く、これを民間に用うるは、公私の為に欠くべからざるの急なれども、今これを記すに横文の数字を用い、額に等しき左行の日本語を書き、・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・あんなひどい旱魃が二年続いたことさえいままでの気象の統計にはなかったというくらいだもの、どんな偶然が集ったって今年まで続くなんてことはないはずだ。気候さえあたり前だったら今年は僕はきっといままでの旱魃の損害を恢復してみせる。そして来年からは・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
出典:青空文庫