・・・いるのみならず、事実においてすでに純粋自然主義がその理論上の最後を告げているにかかわらず、同じ名の下に繰返さるるまったくべつな主張と、それに対する無用の反駁とが、その熱心を失った状態をもっていつまでも継続されている。そうしてすべてこれらの混・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・さらにダルガスの方法に循い植林を継続いたしますならば数十年の後にはかの地に数百万エーカーの緑林を見るにいたるのでありましょう。実に多望と謂つべしであります。 しかし植林の効果は単に木材の収穫に止まりません。第一にその善き感化を蒙りたるも・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・敵は靉河右岸に沿い九連城以北に工事を継続しつつあり、二十八日も時々砲撃しつつあり、二十六日九里島対岸においてたおれたる敵の馬匹九十五頭、ほかに生馬六頭を得たり――「どうです、鴨緑江大捷の前触れだ、うれしかったねえ、あの時分は。胸がどきど・・・ 国木田独歩 「号外」
・・・ それから、なお、十分間も、犬に対する射撃は、継続された。犬の群は、白い霜の上に落ちたその黒い影法師と一緒に動いて、ボヤけた月に、どうかすると、どちらが、犬か、影法師か見分けがつかなくなったりした。支那兵は、彼等と一緒に、共同の敵にむか・・・ 黒島伝治 「前哨」
・・・これは、戦争が起っていない平和の時期に於ても、常に継続しなければならないのは、云うまでもない。この場合、吾々の力点は主として、軍国主義の実質の曝露にある。つまり、反軍国主義文学にあるのだ。 三 平時に於ては、主とし・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・しかし家に居たく無い、出世がしたい、奉公に出たらよかろうと思わずにはいられない自分の身の上の事情は継続しているので、小耳に挟んだ人の談話からついに雁坂を越えて東京へ出ようという心が着いた。 東京は甲府よりは無論佳いところである。雁坂を越・・・ 幸田露伴 「雁坂越」
・・・そこではあらゆる文学上の原理に反して、作品の基礎をなすものは、諸々の情熱の機構でも、出来事の必然的な継続でもなく、裸形にされた純粋の偶然というものなのである。此の喜劇を読んでゆくと、秩序も構図もなく寄せ集められた「雑多な事実」に満ちている新・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・ 中国を相手の戦争は継続している。 × 私は、純粋というものにあこがれた。無報酬の行為。まったく利己の心の無い生活。けれども、それは、至難の業であった。私はただ、やけ酒を飲むばかりであった。 私の最も憎悪した・・・ 太宰治 「苦悩の年鑑」
・・・が出来るのだというのは、なんだか奇蹟みたいで、素晴しい事だと思います、私の家にでも、へちまの棚が出来るなんて嘘みたいで、私は嬉しくてなりません、と哀れな事を主張したので、主人は、また渋々この棚の製作を継続しやがった。どうも、ここの主人は、少・・・ 太宰治 「失敗園」
・・・この大動揺は、昨夜の盗賊来襲を契機として、けさも、否、これを書きとばしながら、いまのいままで、なお止まず烈しく継続しているのである。 太宰治 「春の盗賊」
出典:青空文庫