・・・ここの学校でも心に刻まれているのは、構内の雑木林である。網野菊、丹野禎子という友達たちと、そこで喋った雑木林が忘られない。学校そのもの、女学生そのものについて、いい感じはなかった。成瀬氏の伝統で、「天才」だの「才能」だの美辞は横溢しているく・・・ 宮本百合子 「女の学校」
一 網野さんの小説集『光子』が出たとき私共はよろこび、何か心ばかりの御祝でもしたいと思った。出版記念の会などというものはなかなか感情が純一に行かないものだし、第一そういう趣味は網野さんから遠い故、・・・ 宮本百合子 「九月の或る日」
・・・女の人では野上さんとか、網野さんとかいう方がありますけれど、そして、私が強いて求めない気持もありますけれど、男の方としては一人もないといっていいと思います。 旅行は大好きですからよく一人で出かけます。ずっと以前、まだ結婚しない時分はたび・・・ 宮本百合子 「十年の思い出」
・・・しかし網野さんほどではないかも知れません。網野さんの活動好きにはおどろきます。 わたくしは他にお能を好んで見ます。あの衣裳の色の配合なぞ立派なもので感心させられます。この頃も桜間金太郎氏の「巴」を見て、その狂言の、罪のない、好意のもてる・・・ 宮本百合子 「身辺打明けの記」
・・・ 目白の女子大にいたのは、ほんの一学期であったが、ここで知った網野菊子さんは、今も私の誠意ある友達の一人である。野上彌生子さんその他何人かの友達も、やはり文学を中心としてその歴史をさかのぼり、今日まで流れすすんで来たりした過程にめぐりあ・・・ 宮本百合子 「なつかしい仲間」
・・・ 一九四六年四月に網野菊の「憑きもの」が発表された。この作品は第一作品集『秋』から『光子』『妻たち』『汽車の中で』『若い日』その他二十余年の間つみ重ねられてきたこの作家の、日本的な苦悩をさかのぼって照し出す感動的な一篇であった。このつま・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・東京は両三日中に出発することになると思いますが、途中、奈良で網野菊子さんに御会いして、それから先に行く湯浅さんに京都で一所になって行きます。朝鮮を経てハルビンに行きそこで外套の裏でもつけて行くわけなのです。 最初モスクワに行き、それから・・・ 宮本百合子 「ロシヤに行く心」
出典:青空文庫