・・・検事総長が「友人づきあい」で疑獄事件に顔を出す「法の権威」は、こういう言論の自由抑圧の事実をどういう罪名でよぶか知らないが、日本の民衆としては、自分の投じた一票で猿ぐつわをかませられるとは心外だろう。 現内閣は、政権をとったら、何より先・・・ 宮本百合子 「平和をわれらに」
・・・その三年目がエエリヒ・シュミット総長の下に、大学の三百年祭をする年に当ったので、秀麿も鍔の嵌まった松明を手に持って、松明行列の仲間に這入って、ベルリンの町を練って歩いた。大学にいる間、秀麿はこの期にはこれこれの講義を聴くと云うことを、精しく・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・ 三間打ち抜いて、ぎっしり客を詰め込んだ宴会も、存外静かに済んで、農商務大臣、大学総長、理科大学長なんぞが席を起たれた跡は、方々に群をなして女中達とふざけていた人々も、一人帰り二人帰って、いつの間にか広間がひっそりして来た。 もう十・・・ 森鴎外 「里芋の芽と不動の目」
・・・涙が流れて私は何も申し上げられませんでしたが、私に代って東大総長がみなお答えして下さいました。近日中御報告に是非御伺いしたいと思っております。とそれだけ書いてあった。栖方のことは当分忘れていたいと思っていた折、梶は多少この栖方の手紙に後ろへ・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫