・・・筒の中に螺線条をこの頃施こすのもこの規則に従うのサ。鳶の尾は螺線を空中に描いて飛ぶのサ。魚の尾も螺線をなすのサ。鶴が高く登るのにも空中を輪になッてぐるぐると翔りながら飛ぶのサ。是非ねじれて進むのサ、真直に進むものはないよ。地球も自転しながら・・・ 幸田露伴 「ねじくり博士」
・・・額には皺、眼のまわりには疲労の線条を印している。しかし眼それ自身は磁石のように牽き付ける眼である。それは夢を見る人の眼であって、冷たい打算的なアカデミックな眼でない、普通の視覚の奥に隠れたあるものを見透す詩人創造者の眼である。眼の中には異様・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・を通過して平たくひしゃげた綿の断片には種子の皮の色素が薄紫の線条となってほのかに付着していたと思う。 こうして種子を除いた綿を集めて綿打ちを業とするものの家に送り、そこで糸車にかけるように仕上げしてもらう。この綿打ち作業は一度も見たこと・・・ 寺田寅彦 「糸車」
・・・ ドイツのフィッシンガーの作った「踊る線条」という「問題の映画」がある。この映画では光の線条が映写幕上で音楽に合わせて踊りをおどる。これと、前述のようなレヴュー映画の場合に生きた人間で作った行列の線の運動し集散するのとを比較して見ると、・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
フィッシンガー作「踊る線条」と題するよほど変わった映画の試写をするからぜひ見に来ないかとI氏から勧められるままに多少の好奇心に促されて見に行った。プログラムを見ると、第五番「アメリカのフォクストロット」。第八番、デューカー・・・ 寺田寅彦 「踊る線条」
・・・ これに反して、ギバがなんらかの空中放電によるものと考えると、たてがみが立ち上がったり、光の線条が見えたり、玉虫色の光が馬の首を包んだりする事が、全部生きた科学的記述としての意味をもって来る。また衣服その他で頭をおおい、また腹部を保護す・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
出典:青空文庫