・・・ 二十日 美濃部がオペラに誘う。岩本のことづて。 Avery で。Aが不快な顔をしたので風邪と云ってやめる。夜、岩本さんと、村川、松本氏の送別会へ行く。 二十二日 Washington Birthday 一宮・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・ 満州事変以来四年を経て、その年は日本の文化が新たに遭遇しなければならないめぐり合わせについて、美濃部達吉博士の問題その他をめぐって、一層痛切に感じられた時でもあった。文化の擁護、知識の健全性の防衛と云う一般の要求が能動精神の提唱される・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・領事館へ行って、うちの母の体がひどく悪いのだからと云って、話したとき、美濃部などは、何の注意もそれには向けなかった。そういう興亢した気分にある私をつかまえて、河原は、岩本さんの不幸を云った。各自が各自の事をのみ考えるのだ。私の母の生命などと・・・ 宮本百合子 「無題(二)」
・・・爺いさんは元大番石川阿波守総恒組美濃部伊織と云って、宮重久右衛門の実兄である。婆あさんは伊織の妻るんと云って、外桜田の黒田家の奥に仕えて表使格になっていた女中である。るんが褒美を貰った時、夫伊織は七十二歳、るん自身は七十一歳であった。・・・ 森鴎外 「じいさんばあさん」
出典:青空文庫