・・・叔父さんが僕のおとっさんになった、僕はその後何度もお伴をして猟に行ったが、岩烏を見つけるとソッと石を拾って追ってくれた、義父が見ると気嫌を悪くするから。 人のいい優しい、そして勇気のある剛胆な、義理の堅い情け深い、そして気の毒な義父が亡・・・ 国木田独歩 「鹿狩り」
・・・ジェーンは義父と所天の野心のために十八年の春秋を罪なくして惜気もなく刑場に売った。蹂み躙られたる薔薇の蕊より消え難き香の遠く立ちて、今に至るまで史を繙く者をゆかしがらせる。希臘語を解しプレートーを読んで一代の碩学アスカムをして舌を捲かしめた・・・ 夏目漱石 「倫敦塔」
・・・ それでなくてさえ、「義母はんはこないだも義父はんと云うてでしたえ、 若しお金をどむする事出けん様やったら私早う戻いて仕舞うた方がええてな。 義母はんは、若しもの時はそうきめて御出でやはるんえきっと。 恭二は、行・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
出典:青空文庫