・・・という文章で、鴎外は「翁草」によっているこの短い作の中に「二つの大きい問題が含まれていると思った」ことを述べている。「一つは財産というものの観念である。」「今一つは、死に掛っていて死なれずに苦しんでいる人を死なせてやるということである。」即・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・ 万治元戊戌年十二月二日興津弥五右衛門華押 皆々様 この擬書は翁草に拠って作ったのであるが、その外は手近にある徳川実記と野史とを参考したに過ぎない。皆活板本で実記は続国史大系本である。翁草に興津が殉死したのは三・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」
・・・ この話は『翁草』に出ている。池辺義象さんの校訂した活字本で一ペエジ余に書いてある。私はこれを読んで、その中に二つの大きい問題が含まれていると思った。一つは財産というものの観念である。銭を待ったことのない人の銭を持った喜びは、銭の多少に・・・ 森鴎外 「高瀬舟縁起」
出典:青空文庫