・・・わが身に痛くこたえているから封建的なものを嗅ぎわける神経が病的にするどくなってきている人々は、自身のうちにある近代精神の後進性は自覚しないで、同じ神経を民主主義の翹望の方向へも向けて、日本で民主主義という、そのことのうちにある封建なものを熱・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・ 現代の婦人の翹望と努力とは、過去の或る時代に素朴に考えられていた平等化、男性化の方向とは全く反対に向っている。あらゆる女は、心から最も調和的に、最も人間らしい自然さで女らしく生きたいと希っている。花咲き溢るる女らしさの全幅をもって経済・・・ 宮本百合子 「先駆的な古典として」
・・・ マヤコフスキーの科学力に対する翹望と愛好は「風呂」で一層率直に示されてる。実際ソヴェト科学の発展は、社会主義生産の建設事業に何より必要なものだ。耕作用トラクターからはじまって、飛行機は勿論、どこかに成長しつつある同志、チュダコフの強力・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・的な諸現象には反対しながら、自分と社会とを封建から根本的に解放するキイ・ポイントがどこにあるかということについては、実に信じられないほど僅かしか知らず、漠然としかしらず、しかもその僅少な理解と漠然たる翹望は、今日、ちっとも民主的でもないし、・・・ 宮本百合子 「誰のために」
・・・そもそもの第一歩から小説を書くということは同志小林にあっては階級社会変革の翹望をひそめた仕事であった。「一九二八年三月十五日」が書かれるにおよんで、彼は人道主義者からマルクス主義者として立ち現れた。この時分、同志小林はすでに階級闘争の実践に・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価に寄せて」
・・・ 私は、良人の学業を信頼し、科学性の常識化を翹望するよき数人の夫人達が、科学の科学性を十分発揮し得る社会とは、どのような社会であるかということについて、優しい心で真面目に一考されることを切望するのである。〔一九三五年五月〕・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・ここに、現代ジャーナリズムに対する読者の声、要求の深い意義とその積極性への翹望があり、又、編輯部の文化人としての良心、良識を今日にあっても絶望せしめない或るものがあると信じられるのである。〔一九三七年十一月〕・・・ 宮本百合子 「微妙な人間的交錯」
・・・ ヒューマニズムがまとまった、行動の指導力を持った文芸思潮となるにはまだ先にも言ったような距離が残されているが、ヒューマニズムの翹望が今日の多数者の心にあることの実例として、一部で希望し、一部でそれを警戒しているほど日本にファシズム文学・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムの諸相」
・・・の山村がそれに対する闘いは全く放棄している非人間的な生活の現実から眼を離して夜は遠くギリシャの哲学の中にプラトーやソクラテスなどと遊んでいるその姿は、河合氏の形而上学的な人格完成の翹望の声を、間接ながら思い浮ばせた。河合氏は、人格は各人の精・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・誰しもそれこそのぞましい事情と思うのであるが、闊達自在という文学を頭の中で、或は感情の中で、描き想い翹望することと、今日の現実の社会関係の下で、プロレタリア作家が、闊達自在に生きるということとの間には、種々微妙なものが横わっている。 プ・・・ 宮本百合子 「プロ文学の中間報告」
出典:青空文庫