-
・・・語らぬ恋の力が老死に至るまで一貫しているのは言わずもあれ、かれを師とするもののうちには、師の発展のはかばかしくないのをまどろッこしく思って、その対抗者の方へ裏切りしたものもあれば、また、師の人物が大き過ぎて、悪魔か聖者か分らないため、迷いに・・・
岩野泡鳴
「耽溺」
-
・・・九如は老死して、その子がこれを伝えて有っていた。 王廷珸字は越石という者があった。これは片鐙を金八に売りつけたような性質の良くない骨董屋であった。この男が杜九如の家に大した定鼎のあることを知っていた。九如の子は放蕩ものであったので、花柳・・・
幸田露伴
「骨董」