・・・「観音様へ願をかけるのも考え物だとな。」「だが、お爺さん。その女は、それから、どうにかやって行けるようになったのだろう。」「どうにか所か、今では何不自由ない身の上になって居ります。その綾や絹を売ったのを本に致しましてな。観音様も・・・ 芥川竜之介 「運」
・・・どうも黍団子の半分くらいでは、鬼が島征伐の伴をするのも考え物だといい出したのである。すると犬は吠えたけりながら、いきなり猿を噛み殺そうとした。もし雉がとめなかったとすれば、猿は蟹の仇打ちを待たず、この時もう死んでいたかも知れない。しかし雉は・・・ 芥川竜之介 「桃太郎」
・・・ばかりを奨励するのも考え物ではあるまいか。少なくとも「悪行日」をこれと並行錯雑させて設けてみるのも一つの案ではあるまいか。昔の為政家は実際そういう事をしたもののように見える。 しかし私のこの案はやはり賛成してくれる人はなさそうである。私・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・「体は大層好くなりましたが、なんだかこう控え目に、考え考え物を言うようではございませんか。」「それは大人になったからだ。男と云うものは、奥さんのように口から出任せに物を言ってはいけないのだ。」「まあ。」奥さんは目をみはった。四十代が・・・ 森鴎外 「かのように」
出典:青空文庫