・・・もし知識人の苦悩といい、批判というのならば、帰る田舎や耕す田地は持たないで、終生知識人としての環境にあってその中でなにかの成長を遂げようとする努力の意図がとりあげられなければなるまい。駿介に還る田舎を設定しなければこの小説全篇が成り立たない・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ 工場に働くプロレタリアートと地主の野良を耕す貧農にとって、暮らしの辛いこととブルジョアと地主とにしぼられることは、男も女も全く同じだったのです。 それを、では何故ブルジョア・地主のロシアでは、勤労者まで女を一段低いものと思っていた・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の婦人と選挙」
・・・ それから部屋の掃除も、畑を耕すことも、植物を採取することも一緒にする。托児所の揺籃から共学でそういう点でも気分が自然違うわけで、つまり子供のうちから女と一緒に働き、一緒に仕事をするということから先ず根本の感情が出来て居るから非常にはっ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトに於ける「恋愛の自由」に就て」
・・・それから部屋の掃除も、畑を耕すことも、植物を採取することも一緒にする。托児所の揺籃から共学です。そういう点でも気分が自然違うわけで、つまり子供のうちから女と一緒に働き、一緒に仕事をするということから先ず根本の感情が出来ているから非常にはっき・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・利根川の青き水の面に白き帆の 水鳥の如舞ひつゝも行く荒れし地を耕す鍬の手を止めて 汽車の煙りを見守れる男田舎道乗合馬車の砂煙り たちつゝ行けば黄の霞み立つ赤土に切りたほされし杉の木・・・ 宮本百合子 「旅へ出て」
・・・「力強い、勇気の有る、若々しい朝は、立派な洗面器で顔を洗って、おしまいして坐布団の上にチョロンと坐るよりは小川の流れでかおを洗いグルグルまきにして紺の着物に赤いたすきで田草をとり草を刈り黒い土を耕す方がつり合って居て立派にちがいない」・・・ 宮本百合子 「日記」
・・・ 桑の芽は膨らみ麦は延びて、耕地は追々活気づいて来たけれども、もう耕す畑も海老屋の所有にされてしまったお石は、毎日古着や駄菓子を背負っては、近所の部落へ行商に出かけた。 禰宜様宮田は、あんな不意なことで死んでしまうし、家の畑は、とう・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・長年耕された土地でさえも肥料の入るわりに良い結果は表れない様な地質である、その上に耕すのも、ならすのも、収獲するにも、工業的の機械を用うる事はなく、鍬、鋤、鎌などが彼等唯一の用具であくまでもそれを保守して、新らしい機械などには見向きもしない・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫