・・・ 膝を抱えて小さくうずくまっている禰宜様宮田は、うっとりと、塵くさい大きな肩と肩の間からチロチロと美しく燃える火を見ながら、あてどもない考えに耽るのが常であった。 けれども、このごろでは何を考えてもお仕舞いまではまとまらず、またまと・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・感動し、失望し、考えに耽る内なる自己と起った事柄とをしっくり対談させることを知っているようで知らない自分は、考え、考え、頭の上で思索の範囲の拡大を見るのみで、結局内部では実践的に何一つ解決されないということになる。 或る期間の後、私は、・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
・・・ 安逸に耽る教育者! 見よ汝が造れる人の世は執着を虚栄の皮に包んだる偽善の塊に過ぎぬじゃないか。要するに現代の道徳は本義として「物質的超越と霊的執着とをもって自ら処決せよ」と求む。言い変うれば「利己」を脱して精神的自覚の上に立ち汝の義務をな・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫