・・・芸術は職能として、人生の複雑なる心理、環境と生活、社会と個人等を描くにある。体質に於て同じからざる人間は、同じからざる考えを抱く。また生活層によって、喜怒哀楽を異にする。それ等を、公平によって、書くことは不可能なことである。 都市労働者・・・ 小川未明 「純情主義を想う」
・・・ 三 教養の読書と専門職能の読書 読書には人間教養のためのものと、社会において分担すべき職能のためのものとある。後者に関してはその種類が多様であるのと、技術知の習得に関するので、特に挙げてあげつらうことができない。た・・・ 倉田百三 「学生と読書」
・・・男と女とが、互にほんとに男らしく、ほんとうに女らしく、安心して自分たちの性の人間らしい開花をたのしみながら、めいめいの特色による職能の特徴も生かしてゆく状態であることがわかる。性別いかんにかかわらず法律のまえに平等である、という憲法の実現の・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・ 母たる義務が示している権利によって、女性と子供の生活の事情があらゆる職能の場面で大切にされ、理にかなった扱われかたをするようにして行かなければならない。 そしてこれらの現実のいとなみが、いろいろの事情からそうやすやすと実現しにくい・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・で、著者は過去の理解が、現実の歴史との関係で文学史を静的なものとし、批評を動的なものとして区別をもったまま止っていた誤りを訂して、両者の職能を密接な関連のもとに統一することをこそ、批評の本質が批評家に求めているものとしてみている。こういうも・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・ 日本の働く婦人はあらゆる職能を通じて、今日きわめて深刻な板ばさみに置かれているのが現実であると思う。活動に堪える力は最大まで社会のためにと、外の仕事に動員されるのだけれど、外の仕事ではつねに、いざとなると女はどうせ家庭に入る者だから、・・・ 宮本百合子 「女性の現実」
・・・ 成長をうながす一つの方法として、一部では隣組に主婦会をおいて、主婦というものを一つの職能として上部の組織へも代表を送り出して発言する可能をつくろうと考慮中らしい。 主婦という立場を職能とみるべきであるという考えは、日本の新体制から・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・その他多くの人々がそれぞれの道の違いはあっても、同じような性質の職能の変化でもって今日作家として活動していると思う。 去年の十二月二十二日にモスクワでニコライ・アレクセーヴィッチ・オストロフスキーがその三十二歳の生涯を終った。彼の作品「・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・何よりも、その年配の働く娘が急にふえて、全く装も学校のつづきで働いているからであるけれど、健康の状態も向上しているわけだろうし、職能の範囲の未来性も考えられる。そういう娘さんは、心持も朗らかなのだろうと思うけれど、その朗らかさは、云ってみれ・・・ 宮本百合子 「若い娘の倫理」
・・・金を持って、緊張する程の職能教育も授けられず、学校もなくなってしまった青少年達は、非常な勢いで社会的な堕落に染まって行った。未成年者の喫煙、飲酒、買婬は驚く程のスピードで無垢な少年達の生活を崩して行った。その結果工場の資材を持出して売ること・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫