・・・高岡只一が凡そ四時間に亙って陳述した間、裁判長はただ数度小さい言葉尻をとらえて、それで威厳でも示そうとするようにこけ脅しめいた文句を云いましたが、誰も問題にしていない。威厳は裁判長にはないのです。党員たちの態度の方に威厳があると感じました。・・・ 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
・・・そういう作者たちが、必しもこけ嚇しやはったりを試みないのでもない、という事実である。近頃の同人雑誌の小説について語られていることなのであるが、それらの言葉をじっくりと胸にうけとって考え深めて行って見ると、日本の現代文学がもっている次の世代の・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・同じ六月ロンドンで第二回会議を持った国際文化擁護国際作家会議は、各国文化を脅しつつある「反合理的・反科学的エモーショナリズム」への抗議と、人間的な共同精神を失って専門化・瑣末化しすぎた現代学究への健康性の要求として、フランス支部から提出され・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 敵のこすい脅しのわなにかからず、わたしらはわたしらの日本プロレタリア文化連盟を守ろう!『働く婦人』を守ろう!「働く婦人の夕べ」の記念、三月八日の国際婦人デーの記念のため、近づいて来たメーデーまでに『働く婦人』直接購読者を倍にふやそう!・・・ 宮本百合子 「日本プロレタリア文化連盟『働く婦人』を守れ!」
・・・ 現代の独占資本という魔ものがひきおこすあらゆる混乱と矛盾を、魔もののしきたりの下で解決しようと、そのために時間を稼ぐ一つの手段として、それをきいただけでも身の毛のよだつ戦争という脅しの大凧があげられているわけである。 こういう・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・「いいや、声ででも嚇しつけんと、こんな奴、何さらすかしれん。」「阿呆なこと云うてんと、置いといてやらえな。」「こんな奴置く位なら、石の頭巾冠ってる方が、ましじゃ。」 勘次は今が引き時だと思った。そして、そのまま黙って帰りかけ・・・ 横光利一 「南北」
・・・あそこで地極の夜が人を威している。あそこで大きな白熊がうろつき、ピングィン鳥が尻を据えて坐り、光って漂い歩く氷の宮殿のあたりに、昔話にありそうな海象が群がっている。あそこにまた昔話の磁石の山が、舟の釘を吸い寄せるように、探険家の心を始終引き・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
出典:青空文庫