・・・刑務所と工場との建築に現われるあらゆる美しい並行直線の交響楽。脱獄のシーンに現われる二重の高塀の描く単純で力強い並行線のパースペクチヴ。牢屋や留置場の窓の鉄格子、工場の窓の十字格子。終わりに近く映出される丸箱に入った蓄音機の幾何学的整列。こ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・はかかる情勢の裡にあって、日常生活の様相においてさえも新たな一つの歴史の段階に入らんとしつつある階級人のそれぞれの苦痛の姿を語った。藤森成吉氏の戯曲「火」は脱獄後の長英と親友鈴木春山とが描かれ、「三十年」は昨年の同じ作者による「シーボルト夜・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫