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・・・おれが飯屋へ飛び込んで空樽に腰掛けるのもそれだ。A 何だい、うまい物うまい物って言うから何を食うのかと思ったら、一膳飯屋へ行くのか。B 上は精養軒の洋食から下は一膳飯、牛飯、大道の焼鳥に至るさ。飯屋にだってうまい物は有るぜ。先刻来る・・・
石川啄木
「一利己主義者と友人との対話」
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・・・そこだけは、西洋風にテーブルを置いて、安楽椅子に腰掛けるようにしてある。大塚さんはその一つに腰掛けて見た。 可傷しい記憶の残っているのも、その部屋だ。若く美しい妻を置いて、独りで寂しく旅ばかりするように成ったということや、あれ程親戚友人・・・
島崎藤村
「刺繍」