・・・人が教えらえたる信条のままに執着し、言わせらるるごとく言い、させらるるごとくふるまい、型から鋳出した人形のごとく形式的に生活の安を偸んで、一切の自立自信、自化自発を失う時、すなわちこれ霊魂の死である。我らは生きねばならぬ。生きるために謀叛し・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・生計不如意の家は扨置き、筍も資力あらん者は、仮令い娘を手放して人の妻にするも、万一の場合に他人を煩さずして自立する丈けの基本財産を与えて生涯の安心を得せしむるは、是亦父母の本意なる可し。古風の教に婦人の三従と称し、幼にして父母に従い、嫁して・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・殊に政府の新陳変更するに当りて、前政府の士人等が自立の資を失い、糊口の為めに新政府に職を奉ずるがごときは、世界古今普通の談にして毫も怪しむに足らず、またその人を非難すべきにあらずといえども、榎本氏の一身はこれ普通の例を以て掩うべからざるの事・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・それらはどれもすべて、民主主義と、平和と、民族自立のための旅行であった。侵略に抗する世界の善意としての旅行者であった。 東京裁判のラジオをきいている私たちの心の苦痛はいかばかりであろう。私たちは、世界の女性に向って叫びたいとおもわないだ・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・それに抵抗して日本の理性と学問、文化の自立を主張する動きは、全日本の規模で全学問の分野を包含した。生きる自由、学び、働き、良心に従って行動する自由とともに、人権の一つとして奪われた理性を回復しようとする日本の青春の奮闘がある。すべての人々に・・・ 宮本百合子 「新しいアカデミアを」
・・・耐えがたい隷属の生活であればこそ、世界平和と民族の自立の要求は、アジア各民族の婦人たちの精神にはげしくもえたって、マライには七千人の婦人たちによる統一戦線がつくられました。ビルマでは一九四六年に全ビルマ婦人会議が組織されました。ここには四万・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・日独にたいする講和促進と中国から手をひくがよいという主張、植民地住民の自立権の確立なども、ウォーレスの政策の一部にふくまれている。 アメリカ国内の民主的なすべての人々は、政権争いをこえて世界をあかるくするための誠意の披瀝されたウォーレス・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
・・・ わたしたちの民族独立への希望や、文化の自立への希望――つまり独立した社会人として当然に抱いている生活におけるすべての希望は、ファシズムとの闘いなしにはうちたてられないことを痛感しているわけですが、それにつけてもわたしたちは日常生活の中・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・一九四八年のなか頃から、国内にたかまってきている民族自立と世界平和と、ファシズムに反対する文化擁護の機運は、決して一部の人の云っているようにジャーナリズムの上の玩具ではない。こんにち、平和を支持し、ファシズムに反対する作家たちの一人一人が、・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・それから学習そのものを楽にたのしんでさせようという程度がすぎて、自立的な児童の探求心がのばされるよりもさきにあんまりたやすく解決が与えられすぎるということにもふれていました。学校教育の方式の中に当然入りこんできているキャナライゼーションとマ・・・ 宮本百合子 「アメリカ文化の問題」
出典:青空文庫