-
・・・ これに較べて、無名の自適な詩人に、また田舎で暮す百姓の中に、誠に、人間らしく、自分の生活に生きている人がある。その方が、どれ程、私には、羨ましく、貴いか知れないのである。 春になって、花が咲いても、初夏が至って、新緑に天地はつゝま・・・
小川未明
「自由なる空想」
-
・・・個性だけでは知らず知らずの間に落ち込みやすい苟安自適の泥沼から引きずり出して、再び目をこすって新しい目で世界を見直し、そうして新しい甦生の道へ駒の頭を向け直させるような指導者としての役目をつとめるのがまさにこの定座であるように思われるのであ・・・
寺田寅彦
「連句雑俎」