・・・大分臼杵という町は、昔大友宗麟の城下で、切支丹渡来時代、セミナリオなどあったという古い処だが、そこに、野上彌生子さんの生家が在る。臼杵川の中州に、別荘があって、今度御好意でそこに御厄介になったが、その別荘が茶室ごのみでなかなかよかった。臼杵・・・ 宮本百合子 「九州の東海岸」
・・・天然痘流行の為、私達は念の為大分の臼杵で種痘をした。Y、十四位のとき種痘したぎりで、どうも全感らしく、崇福寺の裏の高い段々を降る時など、気分が悪くなったらしかった。今朝、発熱し動かれない。私一人行く。 長崎図書館は、諏訪公園内に在る小ぢ・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・京都にいた間、また、九州に来てから別府、臼杵などにいた間、塵をしずめる打ち水となる程度の降雨に会っただけで、ために予定を変えるような目には遭わなかった。日向で青島へ廻った日、鹿児島で一泊したその翌日、特に快晴で、私達は、世にも明るい日向、薩・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
出典:青空文庫