辰野隆先生の「仏蘭西文学の話」という本の中に次のような興味深い文章がある。「千八百八十四年と云うのであるから、そんな古い事ではない。オオヴェルニュのクレエルモン・フェラン市にシブレエ博士と呼ぶ眼科の名医が居た。彼は独創・・・ 太宰治 「女人訓戒」
・・・性の下で家庭生活を営んでいるのであるが、新たな歴史の担い手である勤労階級の社会関係の必然から、見とおしとしては結局、プロレタリアートの勝利のみが、恋愛や結婚の幸福をも我々に与え得るものであることは実に興味深い事実であると思う。 ソヴェト・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・ チェホフは小市民的卑俗さ、愚劣な伝習というようなものを常に鋭く諷刺し、その下らなさ加減を興味深い短篇の中へ素敵な技術でもり込んでいる。然し、チェホフの諷刺は、どこまでも、自由主義人道主義的インテリゲンチアの諷刺だ。というのは、チェホフ・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・ 自然人らしくさえある宗達が、画面に様式化を創めたのは興味深い。彼にとっては、おそらく万象が、量感にみち、色彩に輝き、声と動きとに満ちていたのだろう。此の世に満々たる美しさ、愛すべきものを、彼はたっぷりした資質に生れ合わせた男らしく、ど・・・ 宮本百合子 「あられ笹」
・・・階級的にどんな立場をとるに至るにしろ、先ず自己というものの意識、それを確立しようとする欲望から出立することは小林多喜二の日記を見てもわかる興味深い事実である。日本のようなインテリゲンツィアの社会環境と思想史とを持つところでは、或る意味で強固・・・ 宮本百合子 「落ちたままのネジ」
・・・などと文化史的な興味深い記述の最後に「八重子『鳩公の話』といふ小説をよこす。出来よろし。虚子に送附」と書かれている。 ホトトギスに、その小説は掲載されたのであったでしょう。発信というところに、八重子とあるから、そういう点では責任をはっき・・・ 宮本百合子 「含蓄ある歳月」
・・・ 興味深いものは、私たちが今日面している人間性解放の現実的諸要素の構成と、ルネッサンス芸術家としてのシェクスピアの世界での人間解放とが、どのようにたがいに似ていて、しかも絶対に異った歴史の内容によってへだてられているかという点であると思・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ 各地方支部ラップが、生産の場所における労農通信員を中心とする文学サークルの活動を過去一年間正しい方針で熱心にやって来た結果、昨今極めて興味深い本がポツ、ポツ出版されるようになって来た。 例えば、或る工場内の文学突撃隊が中心となって・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・となって表現されてきていることは、非常に興味深いことである。パール・バックは、「母の肖像」で豊富な生活力が自然の豊かさそのままの活力と現実性とであふれ動く姿として母の生涯を描いたと同じように、世代の動きによってスーザンによりひろい知的な領域・・・ 宮本百合子 「『この心の誇り』」
・・・ ここで私たちは誠に興味深い現象に遭遇した。能動的精神といい、ヒューマニズムといい、それぞれ熱心に討論されたのではあったろうが、社会全般の中で見ればやはり文壇をめぐっての抽象的な専門家間の論議に終っていたことである。この一二年来、日本の・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
出典:青空文庫