・・・「しかしお前は何故しんこ細工を興業するか。」「いや。いやいややや。それは実に野蛮の遺風だな。この世界がまだなめくじでできていたころの遺風だ。」「するとお前の処じゃしんこ細工の興業はやらんな。」「勿論さ。おれのとこのはみんな美・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・その後東宝経営者は、興業資本の利潤追及の方向を強化して、保守的な文化性の低いスター中心に作った第二組合に、安価なエロ・グロ・剣劇映画を作らせ第一組合を無活動におとしいれ数百名のくびきりを行った。 輸入映画が国外の興業資本によって日本の文・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・こういう芸術味のある歌も、営利の為につまらぬ興業師などに利用されて、歌の上手な婦人で思わぬ不幸な運命に陥いる事があります。アイヌの歌を真に理解して、それに興を覚えて聞くならよいでしょうが、見世物のようにされては可哀想です。 彫刻など・・・ 宮本百合子 「親しく見聞したアイヌの生活」
・・・アメリカやアイルランドの小劇場は興業資本にたいして、金儲け専一でないほんとうの劇場、ほんとうの演劇をもちたいという希望をもつ人々によって創られたものでした。出版事業にひきずられっぱなしでない出版をして、たとえば、ヴァージニア・ウルフ夫妻が中・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・て踊るのだが、あれほど踊りこそ天職と思っている青年がその宝を見出されないで喜劇役者をやっている悲しさというか、その芸術家として必然と思われる哀愁が、初めの部分の踊りかたではちっとも描き出されていない。興業師のマンネリズムがカッスル・ウォーク・・・ 宮本百合子 「表現」
出典:青空文庫