・・・ 少からず不良性を帯びたらしいまでの若者が、わなわなと震えながら、「親が、両親があるんだよ。」「私にもございますわ。」 と凜と言った。 拳を握って、屹と見て、「お澄さん、剃刀を持っているか。」「はい。」「いや・・・ 泉鏡花 「鷭狩」
・・・自然、不良性を帯びた生徒たちのグループに近づいたが、彼等は一人残らず煙草を吸うことで、虚栄を張っていた。私はこのこそこそした虚栄をけちくさいと思った。だから、おれだけはお前らと違うぞというつもりで、卒業するまで煙草は吸わなかった。いいかえれ・・・ 織田作之助 「中毒」
・・・ 然りといえども、馬はなお、その物の毒性なるか良性なるかを弁ずるの能力を有す。然るに今の世の不学の徒は、汽車に乗りて汽の理をしらず、電信を用いて電気の性質を知らず、はなはだしきは自身の何物たるを知らずして、摂生の法を誤る者あり。なおはな・・・ 福沢諭吉 「物理学の要用」
出典:青空文庫