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・・・母は、いくらか世間に名を知られるようになった娘をこの際洋行させたら、もっと偉いものになるだろうと考え、母らしい英断で、家に金もないところを、現在住んでいた家を抵当として金をつくり、それで私をやったのであった。 娘はそんなこととは知らなか・・・
宮本百合子
「母」
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・・・この谷川君の英断にも私は心から感謝した。あのすばらしい蓮の花の光景のことを思うと、マラリヤの蚊などは何でもない。また夜明け前後のあの時刻には、蚊はあまりいなかったように思う。 ところで、巨椋池のあの蓮の光景が、今でも同じように見られ・・・
和辻哲郎
「巨椋池の蓮」