・・・ ニッポン・タイムスは、これらの状況を「茶番になった第二回公判」として、「法廷は小型の議会になった」と書いている。 午後、川口検事によって起訴状が読上げられた。その起訴状の内容がどういうものであるかということは、公判速記がありのまま・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・ モスクワ全市の労働者クラブで、夜あけ頃まで反宗教の茶番や音楽やダンスがあった。 五ヵ年計画がソヴェト同盟に実行されはじめて、教会と坊主は、プロレタリアートと農民の社会主義社会建設の実践からすっかりボイコットされてしまった。・・・ 宮本百合子 「モスクワの姿」
・・・高いガラス天井の下やしゅろの鉢植のまわりを雀が二羽飛び廻っていた。茶番の年とった女がいるだけだ。日本女は英領オーストラリア産小鳥の剥製を眺めながら宏大な空気中で三ペンスのパン菓子を食った。そうしたら雀がその粉をついばもうとしてテーブルのまわ・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・と、茶番めいた口上を言った。親戚は笑い興じて、只一人打ち萎れているりよを促し立てて帰った。 寺に一夜寝て、二十九日の朝三人は旅に立った。文吉は荷物を負って一歩跡を附いて行く。亀蔵が奉公前にいたと云うのをたよりにして、最初上野国高崎をさし・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
・・・そうでない限りいわゆる街路樹なるものは、松並み木、杉並み木などと呼ばれる古来の街路樹に対して、比較にさえもならないお茶番に過ぎぬ。そうして松並み木や杉並み木の街路樹としての壮大さを讃美することは、封建時代を呼び返そうとすることなどでは決して・・・ 和辻哲郎 「城」
出典:青空文庫