・・・――青山、葉山、羽黒の権現さんあとさき言わずに、中はくぼんだ、おかまの神さん唄いつつ、廻りつつ、繰り返す。画工 (茫然として黙想したるが、吐息して立ってこれを視おい、おい、それは何の唄だ。小児一 ああ、何・・・ 泉鏡花 「紅玉」
・・・僕は数学を、もっと勉強したかったから、父に無断で高等学校に受けて、はいったんだ。葉山さんを知ってるかい? 葉山圭造。いつか、鉄道の参与官か何かやっていた。代議士だよ。」「知らないね。」私は、なぜだか、いらいらして来た。どうも私は、人の身・・・ 太宰治 「乞食学生」
・・・無産者芸術運動、その文学の分野では、自然発生的に宮嶋資夫、葉山嘉樹、前田河広一郎、江口渙その他の無産階級出身の小説家の作品が登場し、芸術理論の面では、平林初之輔、青野季吉、蔵原惟人等によってブルジョア文芸批評の主観的な印象批評に対して、文学・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」
・・・「習俗記」「葉山汲子」「新しき塩」「未練」「空白」そのほかいくつかの小説をこの数日の間に読んだのであるが、結局私の心にはその一作一作についての感想を語る興味が生ぜず、むしろ総括的な一つの疑問がのこされた。何故なら、以上の諸作品が、それぞれの・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・前田河広一郎・葉山嘉樹・岩藤雪夫及黒島伝治の写真。 東京へかえったら二三の知人が、 ――どうですね、日本のプロ文士の剣劇レビューは?と云って笑った。 ――ソヴェトのプロ文士の喧嘩もあんな工合なんですか。えらく荒っぽいことがす・・・ 宮本百合子 「ニッポン三週間」
・・・て綜合雑誌『ナップ』が発刊されていた頃、山田清三郎・川口浩両氏によって編輯されたプロレタリア文芸辞典について、試みにハの部を索いて見ると、パルナシアンという字はあるが、バルザックという人名は見当らず、葉山嘉樹はあってバルザックはのせられてい・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・そして葉山の山の斜面に鳥の迫っていった四月の嘱目だと説明した。高田の鋭く光る眼差が、この日も弟子を前へ押し出す謙抑な態度で、句会の場数を踏んだ彼の心遣いもよくうかがわれた。「三たび茶を戴く菊の薫りかな」 高田の作ったこの句も、客人の・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫