・・・ すばらしい葬送曲ができるぞ。」 クラバックは細い目をかがやかせたまま、ちょっとマッグの手を握ると、いきなり戸口へ飛んでいきました。もちろんもうこの時には隣近所の河童が大勢、トックの家の戸口に集まり、珍しそうに家の中をのぞいているのです・・・ 芥川竜之介 「河童」
・・・又、或るひとの感想の中には、ゴーリキイの盛大な葬送の光景を写真で見てプロレタリア作家としての幸福を思い、小林多喜二の不幸な生涯の終りを思いくらべた、何という違いであろう、と感慨がのべられており、その比較などもつよく私の心を打った。 私に・・・ 宮本百合子 「「ゴーリキイ伝」の遅延について」
・・・この恐怖は、祖母の葬送前後著しく私を悩した。それを考えると、自分の健康なのが却って重荷のようで、涙が出た。私が先に死ぬのであったら、一番よい。愛する者を次々に送って、最後に自分の番になる寂寥を思うと殆ど堪え難く成った。 日数が経つと、そ・・・ 宮本百合子 「祖母のために」
出典:青空文庫