出典:青空文庫
・・・ 上村君なんかは最初、馬鈴薯党で後に牛肉党に変節したのだ、即ち薄志弱行だ、要するに諸君は詩人だ、詩人の堕落したのだ、だから無暗と鼻をぴくぴくさして牛の焦る臭を嗅いで行く、その醜体ったらない!」「オイオイ、他人を悪口する前に先ず自家の所信・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・君みたいな助平ったれの、小心ものの、薄志弱行の徒輩には、醜聞という恰好の方法があるよ。まずまあ、この町内では有名になれる。人の細君と駈落ちしたまえ。え?」 僕はどうでもよかった。酒に酔ったときの青扇の顔は僕には美しく思われた。この顔はあ・・・ 太宰治 「彼は昔の彼ならず」
・・・また薄志弱行のぼくは活字にならぬ作品がどんどん殖えて行くとどうしても我慢できず、最初のから破ってしまうので――嘘、嘘。なんでもいいんです。この手紙をここ迄読んで下さったなら、それだけでも、ありがたい。御手紙、下さい。そしたらまた、書き直しま・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・このような「薄志弱行」はいつまでも私の生涯に付きまとって絶えず私に「損」をさせている。 大道蓄音機が文化の福音を片田舎に広めた事は疑いもないが、同時にあの耳にはさむ管の端が耳の病気を伝播させはしなかったかと心配する。今ならばフォルマリン・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」