・・・ 藤森成吉が『改造』九月号に発表した小説「亀のチャーリー」は、三十年もアメリカに移民労働者として辛苦の生活をしている動物と子供のすきな日本人中野が、市場で亀をひろって育てたことから亀のチャーリーとあだ名され、アメリカの子供の人気を博しつ・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ 藤森成吉の「磔茂左衛門」片岡鉄兵の「綾里村快挙録」などは、歴史のなかにおける個人の関係を個人の自然主義風な本能的なものからのみ見ず、社会において彼等の日々の生活がおかれているその現実の諸相からの反映、又それへの主観的な働きかけの歴史性・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・ その意図の限りで貴司氏の二三の作、藤森成吉氏の「渡辺崋山」等は注目されるべきであったが、プロレタリア作家の或るものは、必しも過去の現実へ追究をすすめてゆく要求は抱かず、文学上の諸問題のかかる紛糾が根にもっているところの更に大規模で複雑・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ロマンティックな傾向に立って文学的歩み出しをしていた藤森成吉、秋田雨雀、小川未明等の若い作家たちは、新たに起ったこの文学的潮流に身を投じ、従来の作家の生い立ちとは全くちがった生活の閲歴を持った前田河広一郎、中西伊之助、宮地嘉六等の作家たちと・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・に対して、同志藤森は二月号同誌に「批判の批判」二月五日『東京朝日新聞』に文芸時評「我等の運動」を、同志林は『改造』二月号の文芸時評において、同志神近市子は『日日新聞』月評において、それぞれ反駁、批判を発表した。 私は、これらの反駁、批判・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・ さっき藤森さんが提案されたように、この大会を機会に世界の民主的文学団体へ向って私たちのメッセージを送るということは、この日本独特であって、しかも世界に連なった平和と民主主義文学運動の実際を知り合うために大変いいことだと思います。・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・本当に、文学における才能や作家としての閲歴のある村山、藤森、中野、貴司その他の人々が自他ともに大きい〔十三字伏字〕経験の中から、どうして人の心を深くうち、歴史というものをまざまざ髣髴せしめるような制作をしないのであろうか。 先頃立野信之・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
一『改造』十月号に藤森成吉が「転換時代」という小説を書いている。 自分は非常な興味をもってよみ始め、よみ終ってから何度も雑誌の頁をパラパラめくって考えこんだ。――感服したのではない。不服だった・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
出典:青空文庫