・・・その時、ちょうど夫婦喧嘩をして妻に敗けた夫が、理由もなく子供を叱ったり虐めたりするような一種の快感を、私は勝手気儘に短歌という一つの詩形を虐使することに発見した。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~ やがて、一年間の苦しい努力・・・ 石川啄木 「弓町より」
・・・そして、この期間は同時に、戦時中最悪の労働条件に虐使されて来た勤労男女が、基本的な人権と労働の権利にたって、インフレーションとたたかいながら、日本の労働条件を半植民地の低さから解放しようと奮闘した。外にあらわれた形では大小のストライキ続きだ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・そこには、こんにちの民主的陣営の一部にくいこんでいる陰惨な過去の日本の人間虐使の残像がある。戦争の永年、軍隊の指導部員としての生活をして来て、軍規の野蛮さ、絶対命令に対するはかない抵抗としての兵士たちの仮病を見破りつづけて来た人々。死ぬもの・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
出典:青空文庫