・・・ 小林多喜二が虐殺された一九三三年二月からきょうまでの十五年間、全集刊行のことは忘れようにも忘れられなかった。小林の死の直後日本プロレタリア作家同盟と日本プロレタリア文化連盟とは、小林多喜二全集刊行委員会を組織した。各団体から委員が出て・・・ 宮本百合子 「小林多喜二の今日における意義」
・・・日本の治安維持法は、実際に作家さえ虐殺したのだから。 ところが、その繊細な、ある意味では人間らしい嫌悪や恐怖に、日本の社会の歴史的伝統の著しい特色が加わった。そして今日外国の知識人がおどろいてそのころの日本の状態を理解しがたく感じるほど・・・ 宮本百合子 「世紀の「分別」」
・・・ナチスは、ユダヤ人を追放し、財産を没収し、集団的に虐殺した。ニュールンベルグの国際裁判の公判廷で、ゲーリングは自分らの惨虐をふたたびフィルムの上に展開されて、文字どおり嘔吐したと伝えられている。その命令を下した人物さえ、それを見直すにたえな・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・同志小林が敵に虐殺されたことによって、自身の未完成を揚棄し得たかのように考えるとすれば、それは階級的前衛に加えられる敵の悪虐の真相を、大衆の面前から押しやり、復讐の目標をそらすものである。 われわれは先ず同志小林の業績を正しく階級的に評・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・ナチス占領下のフランスで、フランス人民の自由と文化を守ろうとした人々は、反ナチス、ユダヤ人とさえ見れば虐殺したナチス暴圧下のドイツの中でなおひそかに人類の正義と人権のためにたたかっている人々との交流があった。フランス婦人の間に組織された大学・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
去る二月二十日、暴虐なる天皇制テロルによって虐殺されたわがプロレタリア文化・文学運動の卓抜なる指導者、組織者、国際的規模におけるボルシェヴィク作家、同志小林多喜二の全国的労農葬は、プロレタリアの恨みの日三・一五記念日を期し・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価に寄せて」
一 プロレタリア文化・文学運動の指導者、卓抜な国際的ボルシェヴィク作家同志小林多喜二の虐殺た憎むべき真の敵の姿を覆うものであり、そのことによって、弔辞はかえって敵の支柱、反動の役をつとめる結果に立・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価によせて」
・・・彼の名は彼の蒙った虐殺を想い起させます。その瞬間に私たちの心に恐怖がわきます。小林多喜二的身がまえといわれると、何となしその恐ろしい赤い影の下に、自分をさらせといわれるように感じます。しかし率直にその感情は語られません。それをよけて、文学理・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・ユダヤ人は屡々虐殺された。タタール人抑圧の悲憤にみちた物語は、文豪のトルストイも小説に書いている。帝政時代のロシア支配階級はその他多くの弱小民族を圧迫し生活権を奪うことによって豊沃な耕地を、森林を、鉱山と港とを自分の富として加えた。タタール・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・同時に勤労階級の政党である共産党に対する惨虐な抑圧はますます激しく、指導者の拷問虐殺が行われるようになった。この二つの事情が連関して当時のプロレタリア文化運動は勤労者の生活の現実がそうであったように、文化的な方法を通して勤労階級の政治的・・・ 宮本百合子 「年譜」
出典:青空文庫