・・・ 或弁護 或新時代の評論家は「蝟集する」と云う意味に「門前雀羅を張る」の成語を用いた。「門前雀羅を張る」の成語は支那人の作ったものである。それを日本人の用うるのに必ずしも支那人の用法を踏襲しなければならぬと云う法はない。・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・さちよの周囲には、ずいぶんたくさんの男が蝟集した。その青白い油虫の円陣のまんなかにいて、女ひとりが、何か一つの真昼の焔の実現を、愚直に夢見て生きているということは、こいつは悲惨だ。「あなたは、どうお思いなの? 人間は、みんな、同じものか・・・ 太宰治 「火の鳥」
・・・とは高騰する一方であるから、一時のように同人雑誌の刊行も困難になり、他面発表機関も困難になることから、雑誌を持っていてその誌上を割き与えることの出来る作家の周囲には今後も益々文学志望者がその習作と共に蝟集するであろうと思う。それらの文学愛好・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・従って、金銭をめぐっての、あのことこのこと、その諸関係が、並列的に現象の平等性をもってバルザックの作家的認識の世界に評価を求めて蝟集して来たのは実に自然な成行であったろうと推察される。バルザックは社会的現実を再現し、而もそれを金銭、利害の根・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫