・・・各々もとめるところの形は皆ちがいましょうけれど、私達の理想とするものは、愛と平和の融合を措いてこの世の楽園は考えられないと思います。然し常にこの世に争闘が絶えないと同時に、それは実現し難いものだと思います。例えば親子間の愛――この世にたった・・・ 宮本百合子 「愛と平和を理想とする人間生活」
・・・労働の歌が労働するものの心を融合し統一した」と作者は楽観している。 師範卒業生佐田の安直ぶりが、階級的発展の端緒としての意味をもつ未熟さ、薄弱さとして高みから扱われているのではなく、作者須井自身にとっても弱い一点であることは、「幼き合唱・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・従来のプロレタリア文学は「公式的な階級動向理論に煩わされて、知識階級が自己を無視し、自己を否定し、自己を労働階級に隷属させ、融合させようとしたり」「客観的な批判もなく、自己の正しい検討もなかった」が、新たに行動主義文学によって唱えられている・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・彼女と作品とが融合し溶け合わず、一つの肉体となってしまわないで、かの子さんのまわりに書かれた小説が立っている感じが苦しいのであった。 作者と作品の溶け合っているこの自然の力は微妙となって、例えば夏目漱石の写真を見たとき、人は、「吾輩は猫・・・ 宮本百合子 「作品の血脈」
・・・自分達で創り、育て、守り、高めつつある社会に生きているという日常現実の中に、政治と文学とは融合ってしまっている。唯そこには、より文学的に、より芸術的に表現する才能の違いが存在しているばかりである。 これは、一九一七年以後のソヴェト社会が・・・ 宮本百合子 「新世界の富」
・・・その複雑ないくつもの社会的な力の摩擦融合の根源は、世界史の一部分として生きているその国が、自身の存在のために日夜行っている自転と、自転しつつ二六時中国際的諸関係と接触してその間の関係に変化を生じさせている、その二つの重なりあった歴史から生じ・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・それは当然あること、並に作家活動と社会への功績の理解との融合を除村氏は答えとして与えられている。私がソ連の作家生活の幾分を見聞したのは第一次五ヵ年計画以前のことであった。その頃でさえ、全露作家協会の共同金庫は、生活に余裕ない作家の生活援助の・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・ 偉大な人々の、実に数えきれないほどたくさんのそれ等の美点と美点とが、変化窮りない自由さと、力とにおいて、結合し、融合したときに発する光明の連続が、今、自分にこのような感動を与える。彼女は、彼等が、ただ正直な人間というものでもなく、意志・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・のないものである。この二つは何ゆえに直接に結びつくのか。 これは恐らく我々の「生」に相通ずるものがあるからである。我々はそれ以上に原因を知らない。ただ事実として直接にこの「生」の融合交通のあることを経験する。――しかし我々は、この際我々・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
・・・愛において絶対の融合を欲しながら、それを不可能にする種々な心の影に対してあまりに眼の届き過ぎる人である。そのため先生の平生にはなるべく感動を超越しようとする努力があった。先生は相手の心の純不純をかなり鋭く直覚する。そうして相手の心を細かい隅・・・ 和辻哲郎 「夏目先生の追憶」
出典:青空文庫