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・・・それは大抵硝子の中にぎらぎらする血尿を透かしたものだった。「こう云う体じゃもう駄目だよ。とうてい牢獄生活も出来そうもないしね。」 彼はこう言って苦笑するのだった。「バクニインなどは写真で見ても、逞しい体をしているからなあ。」・・・ 芥川竜之介 「彼」
・・・翌十一日には、朝昼二回血尿とあり。父は自分の体の異和を益々感じたと見え「A・M・9発汽車ニテ直接慶応病院ヘ入院ス」と、やはり鉛筆で記入しています。例の調子で「二階い十」と別にかこって書いています。 ┌──┐ │KO│ └─・・・ 宮本百合子 「父の手帳」
・・・そこで血尿の出るのを見つけて、慶応義塾大学病院へ電話をかけ、そのまま東京駅から真直ぐに小旅行の手鞄をもって入院した。父は休養のつもりであった。腎臓に結石のあることを診断した医師達も、そう急変が起りそうな条件は見出していなかった。六十九歳まで・・・ 宮本百合子 「わが父」
出典:青空文庫