・・・が、私は、賢明なる閣下が、必ず私たち夫妻のために、閣下の権能を最も適当に行使せられる事を確信して居ります。どうか昭代をして、不祥の名を負わせないように、閣下の御職務を御完うし下さい。 猶、御質問の筋があれば、私はいつでも御署まで出頭致し・・・ 芥川竜之介 「二つの手紙」
・・・ かゝる正義の行使は、今日の社会として、当然持たなければならぬ権利である。なぜならば、児童等は、両親のものなると共に、また社会のものであるからだ。より善き社会の建設は、今日の児童によってのみなされるであろう。故に、社会は、また児童等の生・・・ 小川未明 「児童の解放擁護」
・・・たとえば、失業者及びこれと近い生活をする者をして、日常の必要品たる、家賃を始め、ガス、水道、電気等の料金に至る迄、極めて規則的に強要しつつあるのは、解釈によっては、暴力の行使という他はありません。 さらに、インフレーションにより、当然招・・・ 小川未明 「近頃感じたこと」
・・・そういう、鳥にとってはおそらく生れて以来かつて経験した事のない異常な官能行使の要求に応じるに忙しくて、身に迫る危険を自覚し、そうして逃走の第一歩を踏出すだけの余裕もきっかけもないのであろう。ともかくも運命の環は急加速度で縮まって行って、いよ・・・ 寺田寅彦 「鴫突き」
・・・ 第一次欧州大戦後のドイツが、ワイマール憲法をきめて、共和国となった当時最初の婦人参政権が行使され、一時に三十人の婦人代議士が出た。今年、はじめて選挙権を与えられた第二次大戦後のフランス婦人たちは三十二名の婦人代議士を選出し、なかに十七・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・判検事の基本的人権と社会問題の解決に対する理解の矛盾、そういうものが決してこの事件に関係した判検事個人の問題でなく、今日あるすべての権力の法律を行使する態度の中にある分裂、矛盾として私どもは感情的でない本当に人権擁護の実現のために注目してゆ・・・ 宮本百合子 「浦和充子の事件に関して」
・・・しかし、最近の十数年間に、夥しい社会の波瀾にたえながら、少女から成熟した女性へと生きて来た今日の若い婦人たちが、そういう主婦たちと同じような心で、自分たちの行使すべき権利について考えていると思えば、それは一つの大きい謬りであると思う。 ・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・ポツダム宣言受諾後、現在日本の政府は、表面上は人民に向って行使すべき武力を失っている。人民に対して行使する表向きの暴力はもっていないという建前になっている。連合国は、日本人民の平和裏の自主性を認めているのである。地方にも都会にも様々の形で各・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・これは、ルイスなどに対して使われたが、これまでの日本にはなかった新しい権力行使の方法である。 七月五日になって、夕方のラジオは意外なニュースをつたえた。下山国鉄総裁の行方不明事件が告げられた。そして、六日午前五時すぎ、小菅刑務所のわきの・・・ 宮本百合子 「「推理小説」」
・・・ ソヴェト・ロシアにおいては、さっき三階の、ローザ・ルクセンブルグの肖像画のかかった室で、婦人党員が説明したように、実践をとおして獲得した女の公民権を十分に行使する者の率が年々素晴らしく増して来た。たとえば農村においてさえ、ソヴェト選挙・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
出典:青空文庫