・・・という術語を知らないものはなくなっているのである。 新聞などを見ても、食糧の人民管理への関心は高まって来ていて、一般の方向は、そちらに傾いているように見える。つい、二三日前、この気勢に一つの刺戟を与えるような実例があった。東京板橋の区民・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・作者が漫然と医者の術語を用いて、これに Casuistica と題するのは、花房の冤枉とする所かも知れない。 落架風。花房が父に手伝をしようと云ってから、間のない時の事であった。丁度新年で、門口に羽根を衝いていた、花房の妹の藤子が、きゃ・・・ 森鴎外 「カズイスチカ」
・・・ F君は殆ど術語のみから組み立ててある原文の意味を、苦もなく説き明かした。 私は再び驚いた。F君は狂人どころでは無い。君の自信の大きいのは当然のことである。私は云った。「それだけ読めれば、君と僕との間に、何の軒輊すべき所も無いね・・・ 森鴎外 「二人の友」
出典:青空文庫