・・・この勇敢なる黒犬は人々の立騒いでいる間にどこかへ姿を隠したため、表彰したいにもすることが出来ず、当局は大いに困っている。 東京朝日新聞。軽井沢に避暑中のアメリカ富豪エドワアド・バアクレエ氏の夫人はペルシア産の猫を寵愛している。すると最近・・・ 芥川竜之介 「白」
・・・前記の諸君を除いて、平塚君、国富君、砂岡君、清水君、依田君、七条君、下村君、その他今は僕が忘れてしまって、ここに表彰する光栄を失したのを悲しむ。幾多の諸君が、熱心に執筆の労をとってくださったのは、特に付記して、前後六百枚のはがきの、このため・・・ 芥川竜之介 「水の三日」
・・・その表彰式に彼の母も参列したが、人々は「我 Senior Wrangler の姉君」のために万歳を三唱」した。実際母は彼よりただ十八歳の年長者であったのである。彼の郷閭の人々のうちには彼の学者として立つ事が彼の Lord としての生活と利害・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
木村項の発見者木村博士の名は驚くべき速力を以て旬日を出ないうちに日本全国に広がった。博士の功績を表彰した学士会院とその表彰をあくまで緊張して報道する事を忘れなかった都下の各新聞は、久しぶりにといわんよりはむしろ初めて、純粋・・・ 夏目漱石 「学者と名誉」
・・・参議院の考査委員会は、永井隆氏を表彰しようという案を発表したが、六月十二日、七月三日の週刊朝日は、カソリック教徒であるこのひとの四つの著書が、それぞれにちがった筆者であるというようにいっている。 記録文学のあるものは、クラブチェンコの「・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・を文化にもたらす組織として成立し、事業を物故文芸家慰霊祭、遺品展覧会、昨年度優秀文学作品表彰、機関誌『文芸懇話会』の発行とした。そして昭和九年度の文芸懇話会賞は会員である横光利一氏の「紋章」と室生犀星氏の「兄いもうと」におくられたのであった・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・小学校の卒業のときは、総代で、東京市の優秀児童ばかりを集めた日比谷の表彰式で、市長からの賞品を貰った。そのとき綺羅を飾った少女たちの間に、村上けい子という最優賞の娘は、質素な紡績絣の着物に色の褪せた海老茶の袴という姿で人々を感動させたという・・・ 宮本百合子 「なつかしい仲間」
出典:青空文庫