・・・事によると肥料に食傷して衰滅するかもしれない。貧乏のうちは硬骨なのが金持ちになって急に軟化するようにともかくも軟化しそうである。そのかわりそれらの草の実がだんだん発育進化して米や麦よりもいいか、あるいは少なくも同等な穀物になりはしないか。・・・ 寺田寅彦 「路傍の草」
・・・ある国の文化がそのままの形、そのままの内容で他のある国の文化を形づくるということのいいきれないのは、歴史が証明する通り、どこへも拡がらずにある国でだけ栄えて、拡がらないままに衰滅してしまった文化というものがある。古代エジプトの文化のある種の・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・自分というものを社会の現実の中に置いて、自分の発展や衰滅の道行きを理解することが出来なかった。そのために彼女らしい日常生活の横溢が経済的にも行詰って了うと、実際生活に於いて地味にそこから発展の道を見出すことが出来ず、同時に作家としてもその活・・・ 宮本百合子 「問に答えて」
・・・一定の階級が勃興期にある時はその階級の文学も隆興し、その階級が没落期にある時はその階級に属する文学も亦衰滅乃至堕落の道を辿ります。今日のブルジョア文学が段々貧弱になって行くのもそれで、谷崎潤一郎、佐藤春夫などの大家連が滔々として復古主義に赴・・・ 宮本百合子 「婦人作家の「不振」とその社会的原因」
・・・となるか、さもなければ p.102「資本主義体系の衰滅は、労働者階級の意思の意識的仕事でなければならぬ」というヒルファーディングの言葉どおり 自分ら中間勤労者をも含む資本主義体系の内的法則から起るものであるという現実を後方に押しやり、その現・・・ 宮本百合子 「「若い息子」について」
・・・そうして、此の新感覚派文学は、資本主義の時代であろうとも、共産主義の時代であろうとも、衰滅するべき必要は文学それ自身の衰弱を外にして、どこにあろうか。 横光利一 「新感覚派とコンミニズム文学」
出典:青空文庫